10年間年収300万だった貫社長が描く「串カツ田中」の未来とは?(前編)はこちら
フランチャイズで店舗拡大。そして上場へ。
伊達:そこまで人気が出てきたら、真似してくる人も出て来ますよね。
貫:そうなんです。模倣店に行ってその店の串カツを食べてみたんですけど、向こうは「串つけてパン粉つけたら儲かる」って考えでやってるから、脂っこいし胸焼けするしで全然うまくないんですよね。でもそれを食べたお客さんは、「串カツはそういう食べ物だ」っていう間違ったイメージを持ってしまうじゃないですか。そしたら串カツの未来が断たれて、僕らの会社の未来も断たれることになる。だからこそ、1番にうちの串カツを食べてもらって、基準をつくってもらわないといけない。そのためにはスピード展開が必要で、そこでフランチャイズを始めたんです。
伊達:なるほど、そうだったんですね。
貫:フランチャイズを始めた時は、「そんな知らんやつに、家の味をまかせるなんて絶対に嫌だ!」って田中は言ってましたけど(笑)その頃から考え方が中長期的になって、未来の事をちょっとだけ考えるようになったんですよね。
伊達:上場はいつごろ意識をされたんですか?
貫:50店舗目くらいの時ですかね。経営者仲間と河口湖をジョギングしてる時に「上場はどうなの?」って聞かれたんですよ。上場なんて考えた事なかったし、そんなのうちができるわけないじゃんってその時は思ったんですけど、河口湖から帰ってきて3日後くらいには「上場しよう!」っていう気持ちになってましたね。
それまでは本部も僕と田中の2人だけだったけど、上場に向けて人を集めたり組織を整え始めてから、一気に会社らしくなりました。多分、上場を目指してなかったら今の串カツ田中はなかったと思います。
10年間苦労した後に、串カツ田中というブランドに出会ったのですが、僕が串カツ田中を育ててあげたっていうより、僕が串カツ田中に育ててもらったという感じなんですよね。いつも課題をくれて、それをちゃんとクリアするとまた新しい課題をくれる。ずっと手を携えて、「こっち来い!こっち来い!」って、ずっとブランドに言われてるような感じなんです。そんなふうに導いてもらって今に至るから、ほんとラッキーでしかないです。
伊達:でも飲食業でここまでの規模感になるのは、奇跡ですよね。
貫:ほんとに奇跡。チェーン店ができるのって奇跡がないと無理やと思いますよ。僕だって、たしかに串カツは美味しいと思ったけど、それで事業なんてできるとは最初思ってなかったです。だからその奇跡をもらえたのは本当にありがたい事だし、その奇跡で生まれた串カツ田中というブランドをどう育てていくかという事を、今後も一生懸命考えていきたいと思ってます。
「全店舗禁煙」が社会現象へ。串カツ田中が大勝負に出たわけ。
伊達:貫さんが描く串カツ田中の未来はどのようなものですか?
貫:まずは田中を「日本国内で限界まで伸ばしていく」というのが目標です。海外はまだ後でいいと思っていて、国内でまず1000店舗を目標にしていて、そのために今何をやるべきかって事を考えています。例えば禁煙施策は、いち早く実施しましたね。
伊達:あれは社会現象にもなってましたし、かなり衝撃的な施策でしたね。
貫:あの施策をなんで急いでやったかというと、串カツ田中が全店舗禁煙にすることで、子どものいるファミリー層を呼び込みたかったんです。なんでファミリー層を呼び込みたかったかというと、10歳の子が10年後には成人して居酒屋に行くようになりますよね。その子たちにとっての馴染みの味になって、10年後も変わらず選んでもらえる店になれるように、10年後を見据えた長期戦略として「こども大事にする」という企業メッセージを発信したかったんです。
それに国内に1000店舗出そうと思ったら、絶対にロードサイドも押さえなきゃいけないですよね。ロードサイドの店舗は絶対に家族づれのお客さまがやってくるから、エリア拡大のためにもファミリー向けの戦略を立てて、そのための戦術として全店舗禁煙という施策を実施しました。
伊達:従来通り喫煙者もいただろうから、かなりの大勝負でしたよね。
貫:大勝負も大勝負。鼻血が出るような大勝負でしたよ。でも全店で一斉に禁煙施策をやったからこそ、あれだけの社会現象になったと思うんです。その後もどこかの企業が禁煙にしましたって話題が出ると、絶対に「串カツ田中に続き」ってうちの名前が出てくる。それにありがたいことに、喫煙に関する条例も今後変わってくるから、僕らにとっては追い風ですよね。逆にプロ経営者だったら、禁煙なんて怖くてできなかったんじゃないかとも思います。
伊達:オーナーであり、社長でもあるって強みですね。
貫:投資家説明会でも「大丈夫か?」って聞かれて、「大丈夫かと聞かれても、僕が一番大株主なんで、僕が一番心配してるんです」って言いました(笑)僕が一番リスクを背負っているからこそ、信じてもらうしかないです。
伊達:まあ、それが経営者のしびれる部分で、面白い部分でもありますよね。ましてや上場なんてすると、いろんなことがありますよね。僕の会社はまだ上場して半年も経ってないですけど、絶対に上場して良かったと思ってます。
貫:僕も上場して良かったと思います。従業員には目標設定したり、「頑張れ!」ってガンガン追い込んでいくのに、社長って上に誰もいなくて、何も言われないから逃げようと思えば逃げられるじゃないですか。でも従業員の人生抱えてるわけだから、社長も同じ目線で追い込まれるというか、ちゃんと「日本の経済と真剣に向き合って戦う」っていうことを僕らもしなきゃいけないよなって思いますね。
ひとつひとつに感謝して。貫社長の「しあわせ」の見つけ方。
伊達:最後に1つ質問していいですか?いま外を歩けば「串カツ田中」という自分のお店が、街の至るところにあるわけじゃないですか。長い間ご苦労されたと思うのですが、こんなふうに「串カツ田中」というブランドが全国に広がったいま、どんなお気持ちですか?
貫:夢を見てる気分ですね。何をやってても夢みたいに感じます。なんやろ、「すごいしあわせ」って言葉が一番しっくりくる気がします。場当たりで今までやってきたけど、飲食業界の中でもすごい会社だと、どこに行っても賞賛していただけるし、個人的にもやっと自分に余裕ができたから、人にも優しくできるじゃないですか。だからいろんな意味で「すごいしあわせ」です。親孝行だって、なかなかできなかったけどやっとできます。夢が叶ったわけじゃないけど、「ああ、仕事を頑張って成果を出したら、いろんな意味でしあわせになれるんだな」ってことを、いま味わってる感じですね。
伊達:貫さんってめちゃくちゃ素直で、謙虚でいいですね。
貫:プロ経営者だったら、さらにどんどん追い込んでやってくんだろうけど、僕はそこまでの器じゃないっていうことをわかってますから(笑)経営者にも2種類いると思っていて、ひとつはガツガツと終わりなく戦い続けて、自分を追い込んでいくタイプの人。もうひとつは、一本のことに集中して、例えば「スタッフの給料を上げられて良かった。しあわせ。」「従業員を出世させてあげられて良かった。しあわせ。」とかって、ひとつひとつしあわせを感じていくタイプの人。僕は多分そっち派なんですよね。だから今、本当にしあわせです。
伊達:貫さんのお話はドラマチックで、本当に面白かったです!貫さんの謙虚でひたむきな人柄も伝わってきました。今後一緒に色々なことができたら嬉しいです。本日はありがとうございました!
株式会社エードット→Birdman広報担当。あだ名はなっちゃん。コーヒーとコーホーの人。