「ブーム」ではなく「文化」を。タピオカで挑む新たなブランドづくり 〜後編・水上瞳〜

 

前編 辻愛沙子インタビューはこちら

※このインタビューは2019年8月に行われたものです。

 

フランチャイズ開始。ブランドの価値を落とさず、全国展開を目指すには。

 

-水上さんのTapista(タピスタ)への想いを教えてください。

水上:Tapistaに関わってからまだ1年弱しか経ってないんですけど、最近よく思っているのは、「ブランドが急成長できたとしても、ブランドの価値は絶対薄れちゃいけないな」ということです。

 

-ブランドの価値、ですか。

水上:Tapistaが全国に広がって、お客さんの目に触れる機会が増えるのはとても嬉しいことです。ただ一方で、組織が大きくなるにつれて、今まで自分が直接見ることができていた部分も、誰かを介してでないと見えなくなってきてしまった気がします。

静岡や大阪といった東京から離れた店舗は、そう簡単に自分で見に行くことはできないですし、フランチャイズのお店も出しているので、1つのブランドに関わる人の数もどんどん増えていっているんですよね。そうやって組織が大きくなるにつれて、ブランドの価値が薄れていかないように、Tapistaの目指す世界観や私たちの想いというものを、ちゃんと伝えて理解してもらえるよう努力していこうと思います。

 

 

-フランチャイズで出店できるというのは、ある程度ブランドとして確立され認知されてきた、という見方もできるかなと思うのですが…。

水上:ある程度のスピード感を持ってここまで成長してこれた実感はあります。でも、まだまだTapistaファンを増やすためにできることはたくさんあると思っています。

 

-スピード感による、戸惑いや苦労はありましたか?

水上:もちろんそれはあります。「ブーム」ではなく「文化」をつくりたいと思ってつくったブランドではありますが、やはり今タピオカブームがきている中で、この人気の波に乗り遅れないように、限られた時間の中でもなるべく早く、1番効率的に出店するにはどうしたらいいかと、オーナー企業と一緒に考えながら出店してきました。例えば、静岡店ができた時も「渋谷にあるTapistaっていうタピオカ屋さんが静岡にもできた!」って喜んでもらえたという話を聞きました。立川店がオープンした日も、3時間待ちの列ができてましたよ。

 

-スピード感を持って店舗を展開することで、お客さんにより盛り上がっていただくことができるんですね。

水上:そうですね。今後も、そのスピードを落とすことなく、コンスタントに出店ていけたら理想的です。

 

-これから出店していく新店舗に関して、何か考えていることはありますか?

水上:都内にはすでにたくさんのタピオカ屋さんが出店しているので、マーケットとしては飽和状態です。だから、これからはどんどん地方にもお店を増やしていって、全国で愛されるブランドになりたいなと思っています。例えばTapista静岡店だと、もちろんメインターゲットは女子高生といった若い女の子たちですけど、ショッピングモールの横という立地条件なので、ファミリー層のお客さんもよく来てくれたりするんです。そうやって東京以外の場所にも進出していくことで、全国で老若男女問わず愛されるブランドになれたらいいですよね。

 

 

タピオカを通して考える、日本の社会問題。

 

-タピオカというと、最近は「ゴミ問題」がよく取り上げられていますね。

水上:私たちもその話題についてはよく話してます。まだ実現してはいないのですが、例えば思い切って「Tapistaのゴミはもちろん、他のブランドのタピオカ屋さんのゴミまで回収します!」という企画をしてみてはどうかという話が出ました。タピオカのドリンクって、お店で買った後、飲み歩きながら移動するので、移動先にゴミ箱がなくて困るというケースが多いと思うんです。なので、飲み歩いた先にTapistaがあるのであれば、うちのゴミ箱に捨てていただいて構わないかな、と。タピオカ業界として、「お客さんはちゃんとマナーを守ってタピオカを飲んでますよ」というポジティブなメッセージになればいいと思います。

-そうした動きに賛同する他のタピオカ屋さんとかも出てきそうですね!

 

 

水上:あとこの前、台湾に行ってきたんですけど、台湾だとそれこそ「文化」としてタピオカが愛されていて、タピオカ用のステンレス製のストローが売られているんです。プラスチックストローの代替品として紙ストローが話題になってますけど、タピオカを飲む人たちにはステンレス製のマイストローを持ち歩いてもらえるように、例えばTapistaの刻印が入っているような可愛いデザインのストローをつくって販売できたらいいな、なんて色々考えています。

 

-いいですね!そのストローを1本持っていれば、Tapistaに限らず他のタピオカ屋さんのドリンクも飲めますね。

水上:そういったアイテムを日常的に持ち歩くことで、より「文化」になりやすくなるのかなと思います。7月からはUber Eatsのサービスも開始したので、今後ネット配達が拡大されていけば、場所や時間に縛られることなく、もっと気軽にタピオカが飲めるようなりますよね。

-社会問題といえば、若者の「投票率の低さ」もよく話題に出ますね。

 

 

水上:そうですよね。今年7月の参議院選挙では「投票したらTapistaのドリンクが半額になる」というキャンペーンを実施し、最終的に3266人が利用してくれました。「投票に行ったらTapista半額になるらしいから一緒に行こうよ」っていう感じで、気軽に投票に行くきっかけをTapistaが提供できてよかったです。

 

-選挙ってなかなか扱いにくいテーマですよね。ポジティブな反応がある一方で、ネガティブな反応もあったりしましたか?

水上:もちろん「政治に関心のない人が投票しても意味がない」みたいな意見もありましたよ。でも本当に何も意思がないのであれば白票で出せばいいですし、それも大切な一つの意思で、大切な一票に変わりはないと思うんです。今まで投票にいったことのない人が、今回のTapistaのキャンペーンをきっかけに、選挙を知って、選挙について考える、ということだけでもとても意味のあることだったと思います。反省としては、もう少し早く動いていれば、渋谷区とか他の企業とかと一緒に何かできたかもしれないな、と思うところですかね。なので次の選挙では、もう少しやり方を変えるかもしれません。

-なるほど。ぜひ今後もこのような取り組みは続けていただきたいです。

 

 

いつか「自分たちの資産」となるブランドを。

 

-水上さんが今後Tapistaでやってみたいことはありますか?

水上:これは個人的に思っている勝手な夢なんですけど…、例えば車で橋を渡らないといけないような離島とか、都心から離れて、駅からも遠いような場所に、めちゃくちゃ可愛いお店をいつか出店してみたいです。そのお店に行くこと自体が旅の目的になったり、観光スポットとして人が集まる場所がつくれたらいいなと思います。

 

-そのお店を目的に旅をする、って素敵ですね。

水上:ですよね。あとは、丸の内や銀座、日本橋あたりに、ちょっと大人向けにアレンジしたTapistaも出店してみたいです。タピオカ屋さんって、原宿や渋谷といった若者の街に店舗が集中していて、いわゆるビジネス街にはあまりお店がないんです。だからそういう街で働く人たちが、仕事の合間に気軽に飲める「Tapistaの大人ライン」をつくってみたいですね。

 

-うわあ、それはぜひやってほしいです!年齢や性別に関係なく、美味しいタピオカを楽しめるお店ができれば、さらに「文化」として浸透していきそうですね。

水上:それといつかエードットとして、何か1つのブランドを世の中に出せたら良いなと思っています。その形はお店なのか、サービスなのか、プロダクトなのか…わからないですけど、「自分たちの資産」として1つのブランドを育てていけるのであれば、それってとても幸せなことなんじゃないかな、とも思ってます。

 

 

-まず「いいもの」をつくる。ちゃんと「いいもの」をつくれば、そこに賛同する人たちが集まって、自然と世の中に広まっていく、と言うのが株式会社カラス(エードット子会社)の根本的な考え方ですもんね。

水上:はい、そうです。その根本となる思想はぶらさずにいきたいですね。

-それにしても、Tapistaのタピオカは本当に美味しいので、様々な方にぜひ飲んでいただきたいです!辻さん水上さんの手がけるTapistaが今後どのように成長していくのか、引き続き楽しみにしています。